しかしながら現状、心療内科でうつ病や不安障害(パニック障害、強迫性障害、社会不安障害などが含まれます)と診断され、通院・入院されている患者さんは少なくないのではないでしょうか。
これは本来的には非常に危険なことです。
前回の記事で述べたように、うつ病や不安障害は本来は心療内科の対象疾患ではありません。
心療内科はあくまで内科の一種です。心身相関という視点を取り入れることで、診断や治療においてより多角的なアプローチを可能としていますが、その対象となるのはあくまで身体疾患なのです。
まっとうな心療内科医ならば――まっとうであればあるほど――受けてきた研修はこうした疾患の治療に関するものであって、精神医学の系統的なトレーニングを受けてはいません(逆に精神科医は心身症の診断や治療に関しては十分な知識や技能がありません)。
精神科で扱う薬剤を適正使用するためには、専門的な勉強が不可欠です。
精神疾患の治療に必要な精神療法的な知識や技術に関しても、単に「心の問題に興味がある、理解したい」という個人的なモチベーションだけで習得できるものではありません(専門的な研修を受けていないにも関わらず心療内科を標榜する一般科出身のドクターに、我流の精神療法を駆使するタイプの方が多いように感じられます)
したがって、精神疾患を患われている患者さんが心療内科を受診しても適切な診断や治療を受けられない……はずなのですが、実際には必ずしもそうはなっていません。
心療内科を標榜する医療機関において、適切な診断や治療を受けられていない患者さんは少なからずおられるのですが、多くの場合それは心療内科を受診したために生じる事態ではないことがほとんどです。
このあたりは、いくぶん込み入ったお話になってきます。