事程左様に、心療内科と精神科は、形成外科と整形外科以上に異なるはずの科です(却ってわかりづらい喩えだったでしょうか)。
にもかかわらず、精神科にかかるべき患者さんが心療内科を標榜する医療機関を受診したとしても、「間違ったドアをノックした」ことによる不利益を被る可能性はほぼ0です。
なぜでしょう?
答は簡単で、心療内科を標榜している医師の9割が精神科医だからです。
心療内科を講座としてもっている医学部や医大は日本で5つしかありません。
講座があるということは、教授がいて、助教授がいて……という確立した医局組織があり、医学生が心療内科の講義を受け、実習を行い、研修医が訓練を受ける体制が整っていることを意味します。
心療内科が標榜名として認められたのはほんの10年前のことですが、現在では心療内科を標榜する医療機関の数は3000近くにも上ります。
それに見合うだけの心療内科医を、5つの大学医学部・医大だけで養成することができるはずもありません。
標榜科とは「病院や診療所が外部に広告できる診療科名のこと」で、医師でありさえすれば、医療法第70条で定められた34の診療科名から自由に選んで標榜することができます(麻酔科のみ例外があったような覚えがあります)。
つまり、心療内科を標榜するのに、心療内科医としての研修や認定を受けている必要はありません。
この結果、1996年以降、多くの精神科医や精神科医療機関が「心療内科」を標榜するようになったのです。
※本記事執筆に当たっては、関西医科大学 心療内科学講座のサイトを一部参考にさせていただきました。