実は,薬を飲んでいようがいまいが,そもそも精神科の患者さんの大多数が,自動車の運転を許されていなかった時代がありました。
それほど昔のことではありません。
現在でも,道路交通法施行令には,統合失調症,てんかん,躁うつ病などが,免許取消または停止事由として定められています。
もともとは「幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの」,「発作により意識障害または運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」が,「取消または停止」ではなく,「停止」事由とされていました。
すなわち,上記に定めたような疾患を発症すれば即免許取消ということです。
しかしながら,精神疾患は治療によってほとんどの場合で改善が得られること,精神疾患の既往と交通事故の発生頻度との相関が科学的に証明されていないこと,また,車の運転が許されないことで患者さんの社会復帰が阻害されうること,などの理由で法解釈が見直され,現在では道路交通法施行令には「自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く」といった但し書きが付けられています。
患者さんの病状や重症度に応じていくぶん柔軟な対応がなされるようになったわけです。
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