そもそもこの問題を勉強してみるきっかけとなった藤田保健衛生大の松本美富士医師の研究発表で明らかにされているように,線維筋痛症の疾患概念まで認知しているプライマリケア師は全体の32.2%にすぎず,「病名は知っている」程度の医師が38.4%で,28.4%の医師は病名すら知りません。
病名すら知らない――線維筋痛症の存在すら知らない医師は,線維筋痛症の患者さんを診ても,自分が知る限りの疾患が検査によって除外されれれば,「異常無し」と診断を下すかもしれません。
それでも患者さんの訴えが強ければ専門医を紹介し,運よくその専門医が線維筋痛症を疑えば患者さんは正しい診断に基づいて正しい治療が受けられるかもしれません。
しかしいくつかの不幸が重なると,患者さんは「ヒステリー」の診断のもと,精神科医のもとへと送られてきます。
精神科医に対して,松本医師が行ったのと同様の調査が行われたという話は聞きませんが,線維筋痛症の存在すら知らない精神科医の割合は28.4%ではすみそうにありません。
そもそも精神科の世界では,精神疾患の診断や治療についてすら,標準化された診断や治療が十分には行われていないのです。
専門分野以外の疾患にも興味をもつ精神科医は少数派でしょう。
精神科に紹介された患者さんの多くは,偶発的にセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を処方される僥倖に恵まれない限りは,安定剤を処方され,それが効かなければ(効くはずはありませんが)薬の量が増えるか,カウンセリングのような不必要な治療が施され,病状がどんどん複雑化していきます。
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