この強迫観念が,強い不安を伴います。
前記事で挙げた例でいえば,「吊り革に病原性の高い細菌がついていて,それに触れたことで自分に病気が伝染するかもしれない」という強迫観念によって湧き上がる不安は,現実にその患者さんがペスト菌やコレラ菌に触れた場合に感じるであろう不安に匹敵する場合があります。
そんなはずはないとわかってはいるのに,強い不安を感じずにはいられない。
それが強迫性障害(OCD)の症状の中核です。
表面にあらわれる行動は,この不安に対する反応として位置付けられます。
強迫観念に伴う不安を軽減するための対処行動――それが「強迫行為」です。
手に病原菌が付いたような気がするので(そんなはずはないのだが),手を洗う。
戸締りをし忘れたような気がするので(そんなはずはないのだが),施錠を確認する。
不安は目に見えないので,OCDが周囲の人に気がつかれるのは,こうした強迫行為が現れてからです。
>>>強迫性障害と行動療法(曝露反応妨害法) (4)
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