曝露反応妨害法が曝露法と妨害法の2つの技法の組み合わせであることは既に述べました。
曝露法とは強迫性障害(OCD)の治療においては,強迫観念を生じさせる先行刺激に患者さんを直面させる段階に相当します(先行刺激→強迫観念→不安の出現→強迫行為→不安の軽減……というスキームは前回お示ししたとおりです)。
ここがまず難しく,かつ誤解を招きやすいところでもあります。
例えば,他人が使ったボールペンに触れるとエイズウイルスに感染してしまうのではないかという強迫観念が生じ,繰り返し手を洗うという強迫行為を行う患者さんがいたとします(かなり単純化した例ですが)。
この患者さんに対して,「そんな馬鹿なことがあるか。ボールペンくらい触われるだろう」的な対応は,患者さんが精神科を受診するはるか以前に,家族や同僚,学友によってなされているのではないでしょうか。
何より,OCDでは病識が失われませんから,患者さん自身が,少なくとも病気の初期においてはボールペンに触れようとチャレンジしているはずなのです。
しかしそれを曝露法とは呼びません。
表面的には同じように見えても,曝露法は,患者さんを無理やり先行刺激に直面させるような「ショック療法」とは一線を画するものです。
強迫性障害と行動療法(曝露反応妨害法) (6)
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