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「精神安定剤」という言葉の功罪 (3)

精神科・心療内科領域では、インフォームド・コンセントが時に非常にいい加減に行われている現状があり、「安定剤」という用語はそれにひと役買っているように僕には思われます。

内科を受診したときに、内科を受診する患者さんは多かれ少なかれ身体が不安定になっているので、それを改善するための薬はすべからく「身体安定剤」である、という説明を受け入れる方はいないはずです。

なぜか、精神科ではそれがまかり通ることが少なくありません。

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百歩譲って、向精神薬の総称として「安定剤」を用いたとしても、その後に個々の薬の作用と副作用、処方理由や標的症状についての説明が続くのであれば問題はありません。
しかし、例えばうつ病と診断をつけ、抗うつ薬を処方した患者さんに対して、「軽い安定剤を出しておきますので1週間後にまたいらしてください」式の説明をする医者が、薬に関してそれ以上の説明を付け加えることは稀であるような気がします。

もちろん、ちゃんとした精神科医であればインフォームド・コンセントに対する意識はもっていますし、最近ではネットや本で勉強をして、積極的に説明を求めてくる患者さんも少なくありません。



「安定剤」のひと言をもって説明と同意が成り立つ治療関係というのは、医者の側に「精神疾患をもっている患者にそもそも十分な理解能力はないので説明しても無駄である」もしくは「薬の副作用を説明することで患者を余計に不安にさせる」という旧態依然の認識があり、患者さんの側にも「薬について詳しく説明を受けると必然的に病気についても詳しい説明を受けることになり、そうなると自分が『精神の』病気であることを受け入れなければならない」、「忙しそうな先生に素人の自分があれこれ聞くと煩わしがられるのではないか」といった精神疾患に対する「畏れ」や、医師に対する遠慮があった場合に形成されてしまうのではないかと考えます。


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2009年02月09日 22:04に投稿されたエントリーのページです。

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